男性不妊症

挙示希望で通常の夫婦生活(性生活)を1年行ってもお子さんができない場合、不妊症と診断され、男性は男性不妊症、女性は女性不妊症となります。不妊カップルは約15%存在し、不妊原因は男女半々といわれています。

東京歯科大学市川総合病院泌尿器科・リプロダクションセンター科に勤務中、11年間にわたり精子研究の指導を受けました。ほぼ毎日、研究室に通い、精子精製処置と精子運動の研究を続け、慶應義塾大学より医学博士号を取得しました。開業した現在も、精液検査・精子の処理など全ての工程を私自身が行っております。

造精機能

1日に何千万〜何億個も作成されるヒト精子細胞は全てが完全ではなく、頭部のDNAに損傷を負っている場合が多々あります。精子数や運動率が正常範囲でもDNAに損傷を負っている(特にDNA断片化)場合があり、精子数や運動率だけでは精子の質を判断することは不可能です。また、精子細胞は普通の細胞のようにDNAを自己で修復する機能を持っていないのです。パートナーに異常がなく、精子数・運動率が正常値であってもなかなか妊娠しないカップルがいらっしゃるのはこのためです。

出典 東京大学生命科学構造化センター

出典 産婦人科の基礎知識

卵子の能力

精子は卵子と受精後に、お互いのDNAが結合し卵子の能力で修復されます。受精卵のDNA修復は卵子の能力が担っており、DNA修復が完結すれば、受精卵の分割がきちんと進み、妊娠〜出産に至りますが、DNA修復が不完全であれば受精卵の分割が途中で止まり、流産してしまうと考えられます。従って卵子の能力はとても大切で、その能力は、人によってまちまちではあるものの、ほぼ年齢に関わっていると言われています。41-2歳ではかなり落ち、45歳を過ぎると妊娠の可能性はほぼなくなるようです。女性の中には40歳台後半で妊娠・出産をされる方がいらっしゃいますが、非常に稀です。母体は若い方が妊娠の可能性は高いと思われます。

出典 Appl. Phys. Lett. 104, 223701 (2014)

精子選別の意義

精子数が少なく運動率も悪い場合は特にそうですが、精子数や運動率が正常でも自然妊娠や人工受精でなかなか妊娠が成立せず、女性不妊クリニックにおいて顕微授精を行うことになる方が多いです。顕微鏡で精子をpick upして卵子に挿入する手技です。
では、そのpick up される精子はどのように選ばれるべきでしょうか?
精子内DNAの損傷が少なく、良好な精子が選ばれるべきですね。
顕微鏡で見ただけでは良好な精子を選別することは不可能であり、卵子の能力を上げる治療は確立していないのが現状です。つまりpick upする精子が良好(DNA損傷が少ない)であれば妊娠・出産の可能性が上がると考えられ、そのためには高度な精子精製が必要と考えられます。

精子内DNAを染色し特殊な電気泳動法で伸展させた図です。上段左が正常で、他の2枚はDNAの断片化が起こっています。

精子精製技術について

当院の精子選別技術は、研究指導を受けて培った技術です。私の博士論文にも紹介してありますが、現在ではそれを改良したものとなっております。細胞密度が適正で、精子細胞内DNAの断片化率の低い良好精子を採取することを目的とした技術です。様々な遠心分離法を組み合わせ1検体でおよそ1時間〜1時間半ほどかかります。

精子凍結保存

精製精子や摘出した精巣内精子を液体窒素タンクで凍結保存いたします。
女性不妊クリニックに持参して顕微授精に供することができます。

WHOによる正常精液所見(正常下限値)

上記の正常精液所見と比較しての症状

男性不妊の検査

既往歴の聴取

男性不妊のリスク因子として、糖尿病をはじめとするメタボリックシンドロームや高血圧、内服薬、喫煙、有機溶剤や放射線の暴露、小児期のソケイ部・陰嚢部手術、前立腺炎、精巣上体炎、精巣炎の既往などが挙げられます。

精液検査

3-5日の禁欲後に行なっております。精液の液状化後に院長が自ら鏡検して結果を出します。1時間半ほどお待ちいただければ結果をご説明しております。

精巣、精巣上体、精管、精索、前立腺の触診と超音波検査

精巣の大きさや精巣腫瘍の有無、精巣上体の硬結部分、精管の欠損や太さ、前立腺の炎症や大きさを診ます。陰嚢部超音波検査では、精巣の大きさや腫瘍の有無、精索静脈瘤の逆流や静脈径を診ます。

ホルモン検査

血液を採取して下垂体ホルモンや男性ホルモンの計測を行います。

精索静脈瘤

男性不妊症例の30-40%、全男性の約15%に存在する蔓状静脈叢の血流障害・うっ血状態(左;98%、右;2%)のことで、触視診及び陰嚢部超音波検査で診断します。精子の頭部にあるDNAを断片化したり精液所見を悪化させ、不妊症の原因となります。

Gradeはsubclinical,1-3と4段階で、生殖医学会のガイドラインではgrade2,3は手術適応となっております。

ドップラー超音波検査で蔓状静脈叢の逆流を認め、静脈径が太くなっております。

精索静脈瘤の存在により精子内DNAの断片化が起こり妊娠に至らないことが多く、手術治療を行うことで精子内DNAの断片化が改善され、妊娠率が向上したという論文がここ数年で多数報告されております。

無精子症

精液に精子が認められない状態を言います。閉塞性と非閉塞性の2種類に分類されます。

  1. 閉塞性;パイプカット後、鼠径ヘルニアや停留精巣術後、精管欠損症、両側精巣上体炎など、精子の通り道が両側とも閉塞した場合
  2. 非閉塞性;染色体異常症、ホルモン異常症、抗がん剤治療後、両側精巣炎後など精子を造る機能が落ちている場合

無精子症で妊娠を希望する場合には、顕微鏡的精巣内精子採取術という手術を受けて、精子を採取し凍結保存しておく必要があります。凍結保存精子を女性不妊クリニックに持ち込み顕微授精に今日することができます。
閉塞性の場合は比較的容易に精子を採取できますが、非閉塞性の場合には採取率は50−60%です。
術前には染色体異常の有無を検査する必要があります。

乏精子症、精子無力症

前述したWHOの精液所見と比べ、精子が少ないことを乏精子症といい、運動率が低いことを精子無力症といいます。

精液検査、陰嚢部の視触診・前立腺の触診・陰嚢部超音波検査やホルモン検査・メタボリックシンドローム検査を行います。

結果によって治療は異なりますが、

  1. 生活習慣病因子の除去や生活改善
  2. ビタミン剤、血流改善薬、漢方薬内服
  3. ホルモン治療(hCG,hMGなど)
  4. 必要であれば精索静脈瘤治療

を行い、3ヶ月ごとの精液検査の結果で治療効果を診ます。

必要であれば、精子選別処置して得られた精製精子を女性不妊クリニックに持参いただき人工授精や体外受精に供することがあります。

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